雪と合掌造り

平村教育委員会 「相倉の合掌造り」より

相倉の積雪量は平年で2m、それを越すと大雪という。冬は長い。降雪日数も多い。

(1)冬の準備がはじまる
11月下旬から越冬準備にかかる。それを住まいについてだけみていくことにする。
雪垣は窓だけ残してすっぽりと家を包む。茅または大垂れという丈2mばかりの編み簀を、軒下に立てた仮柱の横木にゆわえつける。妻入り出口は仮屋を作って直接雪が入らないようにし、吹雪の日は大垂れを立てる。平入りでは三角形に組んだ仮屋を作ることもあるが、雪すかしが大変だから、軒下ぞいに通路のある雪垣をして妻側から出入りする。
屋根のひら側はすぐに雪に埋まるから、明かり取りといっても雪垣と軒先はわずかしか空けなくて、家の中が暗い。戸と柱の隙間は強い紙で目張りがされる。
戸外にある冬使うものと、潰れ破損するものはすべて取り込んでおかなければならない。別棟の納屋を作らず、ひとつの棟の内に全部取り込んで冬を過ごすのが、合掌造りの特徴といえる。


(2)屋根の保護のために雪おろしをする
合掌造りは屋根雪がすべり落ちるように急勾配になっていると説明されるが、雪おろしの手間を省くための急勾配なのだろうか。雪おろしをしなくてもよいのだろうか。
実際には、雪の降りはじめ頃と春暖かくなればすべり落ちるが真冬は雪おろしをする。寒中の雪は茅の先にくっついて離れない。アマの合掌組みの外側は室内温度であまり凍らないが、室外の屋尻(尾尻)の部分は茅に雪が凍りついて解けることがない。それで雪がずらないで止まっているので、下から雪おろしをすると一度に雪崩おちて危険だから、合掌屋根の雪おろしは上からする。
棟の雪おろしを棟割りという。棟から棟の下へ綱が下がっていて、それにつかまって棟へ登る。棟近くの小さな明かり取り窓から出ることもある。棟はコシケ(木鋤)で雪を割ってころがすだけで雪おろしになるが、落ちて下に溜まるから雪すかしがいる。棟割は回数多くした。
ひらの雪おろしは、上から順に雪を割って転がし落とす。茅先がいたまないように、カンジキで踏みつけて雪を残すのがよい。日照と風向きで雪の量がちがうから、両ひらはおろし方がちがう。あまり貯めると屋根が傾いたり、茅がいたむから小まめに雪おろしをするのがよいとされた。


(3)雪すかしは屋根を掘り出すことである
おろした雪は下に溜まる。キリカエ(屋尻の先端)の出るまで雪すかしをする。大雪では遠くから掘り進めないとキリカエが出ない。これをしないと軒先を折るから、大雪ではコシケの先で切れ目を入れて屋根と雪を離した。これをキリカエ切りといった。屋尻を厚く葺き雪折れ対策はしてあるが、雪がくっついて引き下げる力は予想外に大きく、キリカエ切りは鉄則であった。
雪おろしが楽なかわりに、屋根を掘り出す雪すかしが大変であった。雪が降り続くと、毎朝明かり窓の雪すかしがある。


(4)雪道は人と心の通うみち
朝の道つけは出口からはじまる。カンジキをはいてコシケで雪をかきわけて、隣の家まで道をつける。集落のきまりに道つけ分担があった。出入り口はきれいにあけた。入り道をつけるといって雪おろし後でも、堀り上げた入り道にしたから、合掌の家は二階から出入りするというのは嘘である。ただ、雪おろしが夕方おそくなってアマから入ったことはある。
夕方には道の穴をふさぎ、道を広くふんでおくのもムラ約束のひとつで、雪道は人が通るだけでなく心を通わせるミチである。


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